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「アセアン・フェスティバル ― MEET ASEAN」
―会って、話して、体験して、心が惹かれる(7)―

アスジャ生はな    2020年05月20日

皆さん、こんにちは。アスジャ3年生のはなです。

前回のブログで紹介されたミャンマーのトゥワナターマのお話はいかがでしたでしょうか。

 

実は、今回の祭りでは、もう一つの劇がありました。それは、2009年に正式にユネスコの無形文化遺産に登録されたワヤン・クリ(Wayang Kulit)というものです。ワヤン・クリ、あるいはワヤン・クリットとは、人形を使ってその影絵を合わせて、日常生活を題材とするストーリーを語る人形芝居の一つです。ワヤン(Wayang)は、ジャワの伝統演劇の総称で、本来は「影」を意味しますが、ワヤン・クリのほかにワヤン・ベベル(絵巻の絵解き)やワヤン・ゴレ(木偶人形芝居)、ワヤン・クリティ(板人形芝居)などもあります。

人形芝居といえば、日本の文楽やベトナムのMúa rối nước(水上人形劇)といった伝統的なものが思い浮かびますし、テレビ人形劇のような現代的なものもあります。ワヤン・クリも含めて人形芝居は本当に様々なヴァリエーションがありますね。

 

それでは、アセアン・フェスティバルでのワヤン・クリは、どんなパフォーマンスだったのか、一緒に見てみましょう。

「ワヤン・クリ」- 知恵の力を賛美する昔話 -

事前の祭り準備委員会の会議でワヤン・クリの提案が出された時、どんな劇かまだはっきり想像できなかったので、ワヤン・クリのリハーサルの時、稽古の様子を少し覗いてみました。

人形たちを見たとたん、「可愛い」と思わずに声に出してしまいました。 元々ワヤン・クリのクリ(Kulit)とは「革」という意味で、ワヤン・クリに使用される人形が牛革で作られるそうです。しかし、今回の祭りでは、アスジャ生は革の代わりに紙を利用しました。精緻に切り出された紙人形を見るだけで、作った人の手先の器用さが分かりました。

その人形たちを操るのが簡単そうに見えましたが、何かの動作を表現したり、それぞれの人物やそのセリフに合わせて動かしたりするのに、ワヤン・クリ・チームは一生懸命練習しなければなりませんでした。それを見て、本番は成功しますようにと思いました。そして、楽しい気持ちのまま本番に入りました。

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さて、本番当日です。ステージは、ワヤン・クリの上演風景を再現するために、他のパフォーマンスで使ったステージではなく、会場の真ん中になりました。出演者たちは会場の真ん中で座ったところ、会場の注目をも集め始めました。

ワヤン・クリの開演前1
開演前にスタンバイしています。

会場の照明がすべて消えたら、白布のスクリーンが張り上げられました。その裏に当てたランプが光って、ナレーターの美しい声とともに主人公がどんどん登場してきました。

今回の祭りではワヤン・クリを通して語られたのは、Kancilという動物の昔話です。Kancilは日本語で「マメジカ」と呼ばれます。東南アジアの昔話では、マメジカのように体が小さいが賢い動物は、自分たちより大きな動物に知恵で勝つという話がよく知られています。この話の主人公であるマメジカも、ただ喧嘩を避けるのではなく、体力の勝負で勝てないはずの相手に食べられる危険から逃げるのに、頭を使って何回も自分の命を守れました。

ワヤン・クリのはじまり2
主人公のシカさんとトラさんが登場し、「昔々…」の話が始まった。

なぜSang Kancilを選んだかについて、このチームの代表者がこう語りました。

チーム代表者
Sang Kancilの話は東南アジアの国々でよく知られていますので、東南アジアの代表的な昔話として選びました。東南アジアで見つけられるKancilという動物は日本語で「まめじか」と呼ばれる鹿です。トラなどの動物と比べたら、体も小さく、力もそれほど強くはないのですが、とても賢い動物です。Kancilに関する物語を通して、想像力と創造力だけで、自分の欠点を埋めることができる、というメッセージがよく伝わってきて、すごいなと感動しました。そのポイントは、東南アジアの魅力の一つで、日本をはじめ世界に発信できればと思います。

ちなみに、ワヤン・クリを演じるチームを結成したのは、マレーシア、フィリピン、タイ、カンボジア、ラオス、ブルネイからのアスジャ生です。ミャンマー劇のチームと同様に他国の仲間と共演するのですが、他国の伝統文化を再現するのは、留学生としてもなかなか珍しい体験でしょう。しかし、自分が慣れない文化を表現するためによく考えたり、話し合ったり、練習したりすることを通して、アスジャ生が異国の友達と互いへの理解を深めることができ、非常に貴重な異文化体験になりました。

ワヤン・クリの上演3
ナレーターと声優たちが暗がりの中、熱心に声で演じています。
ワヤン・クリの上演4
紙人形を操るのも巧妙な動きまでバッチリ合わせられました。
ワヤン・クリのバックステージ5
バックからステージを見たら、こんな感じでした。
ワヤン・クリ・チームのみなさん6
終了後、大きな拍手を浴びるワヤン・クリ・チームでした!

ワヤン・クリ劇も、トゥワナターマ劇と同じように、ただ芸能を紹介する目的だけではありません。東南アジアでよく知られる昔話を通して、日本人に東南アジアの文化を面白く伝えたいと思いました。

私は、どちらの劇にも、自分が小さいころから聞かせてもらって成長してきた昔話のように聞こえて、つい心の中で国と国の距離感が縮んできた気がしました。また、逆に日本の昔話も調べて東南アジアの人々に伝えれば、日本とアセアンのもう一つの架け橋ができあがるだろうと思いました。

読者の皆さんは、いかがでしょうか。

今回は、アスジャ生がワヤン・クリを通してご紹介したマメジカのもつ想像力と創造力のお話で終わります。

次回はいよいよ、アセアン・フェスティバルの特別連載は最終回を迎えますが、祭りはまだまだサプライズが多いです。ぜひ最後までお楽しみに~~♪♪

Text by : はなベトナム
Photo by : ツクルベトナム