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令和2年度日本文化体験・文楽
~芦屋道満大内鑑を見てきました!~

アスジャ生ニッド2021年06月18日
はなさん

皆様、こんにちは。はなです。

先日のブログでは、アスジャ生が都内の高校を訪問する様子をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。

実は、高校訪問の後、アスジャ生はある日本の伝統文化を鑑賞する機会をいただきました。それは。。。「文楽」です!

文楽体験はアスジャにおいても数年ぶりの事業ですので、今回参加するアスジャ生にとっては本当に新鮮な体験です。

そして、この新体験を皆様にお届けするに当たり、アスジャ生ブログの新ライターも登場します!

はなさん笑顔

私のアスジャ国費留学生の同期、ニッドさんです〜🌼

ニッドさんは、毎日何か面白いことを発見できるほど好奇心が強く、とても明るい方ですので、今後のアスジャ生ブログに新たな風を吹かせてくれるのを楽しみにしています。

さて、それでは今日はニッドさんと一緒に、アスジャ生たちが文楽の世界を巡った旅を見ていきましょう〜

ニッドさん

皆様、はじめまして!

ラオスからのアスジャ国費留学生4年生、ホーラーヌパーブ・シースダーと申します。本名が長いせいか覚えられない友人が何人もいて、よく「ニッド」と呼ばれています。(笑)

アスジャ生としてはもう4年目ですが、今年の4月から大学院2年生になりました。現在、自分でもよく誤解してしまう「日本語のアスペクト(相)」を研究しています。このテーマを選んだのは、将来は大学の日本語教師になろうと思っており、同じ誤用をしている学生に説明できるようになりたいからです。

ニッドさん笑顔

日本語を勉強し始めたころからの夢ですが、多くのラオス人に日本語を教えたり、大好きな日本文化をラオスで広げていきたいと思っています。

そして、来日してからもう一つやりたいことを見つけました。それは日本人の皆さんにもラオスやASEANの文化を紹介し、日本・ASEANの架け橋になることです。

大きな夢だと思われるかもしれませんが(笑)、その第一歩としてアスジャ生ブログのライターの1人になりました。今後は、アスジャ生たちと一緒に体験したことを、アスジャ生ブログ読者の皆様にお伝えできたら嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。

文楽今回のブログでは、先ほどはなさんが紹介したように、アスジャ生の日本文化体験事業の様子を伝えたいと思います。アスジャの日本文化体験は、アスジャ生に日本の伝統文化に触れる機会を設けるため、毎年2回行います。その体験を通して、アスジャ生が日本文化の魅力を感じるとともに、日本文化を理解することを期待されます。今まで、「歌舞伎」「文楽」のような伝統芸能というテーマも、「和食」のような伝統的な食文化というテーマも実施されました。

前回の日本文化体験・和食のブログはこちらでご覧になれます >>

私はこの事業に参加する前に、「文楽」は「歌舞伎」の人形バージョンかなとずっと思って気になっていました。それで、アスジャ事業で文楽を体験できることを知ったとき、「参加します!」と、即答でアスジャ事務局に申し込みました。他のほとんどのアスジャ生にとっても初めての文楽体験ですので、私のようにウキウキと楽しみにしている人もいれば、文楽を理解するのは難しいかなと心配していた人もいました。事前勉強会と鑑賞会という2セッションのおかげで、見てがっかりしないどころか、文楽の魅力に惹かれました(笑)。

 

では、私たちアスジャ生はどのように文楽を体験してきたかを見ていきましょう!

事前勉強会

文楽といえば、古い時代の日本語や表現が使われるため、日本人でさえ理解が難しいと言われています。だからといって、外国人は、通訳などがあればいいとは限りません。それだけでは文楽の魅力を深く感じるのはなかなか難しいです。今回の事業は新入生を中心に、文楽に興味を持って参加したいというアスジャ生が多くいましたが、やはりそのような心配もありました。そこで、アスジャ生がより文楽を楽しめるように、アスジャ事務局は文楽について事前に勉強会を行うことになりました。

勉強会のレクチャーは、コロナ禍で対面参加が難しいアスジャ生から参加したいという声が多くあったため、対面とオンラインを織り交ぜたハイブリッド型の形式で行うことになりました。コロナ禍で「オンライン○○」という表現がブームになっていく中、アスジャ事務局もついに挑戦し始めましたね。

当日の事前勉強会の様子はこちらでご覧になれます >>

この勉強会では、アスジャ生たちはどのようなことを勉強したのでしょうか。

最も印象に残ったのは、文楽の3つの重要な要素、太夫・三味線弾き・人形遣いの話です。文楽とはこの3者からなる「総合芸術」であり、数百年も継承されてきて、高度な技術に作り上げられました。「太夫」はナレーションの役割を持っており、現代の日本語ではなく、昔の日本語で物語を語っています。「三味線」は、登場人物の性格や喜怒哀楽の感情を三味線の奏でる音で表現する役割があります。「人形遣い」は、3人で1体の人形を操作します。男性、女性、動物など、様々な種類があり、体の動き以外に顔の感情も合わせられるようです。

また、文楽という名前を前から聞きましたが、今回のレクチャーで初めて文楽の別名「人形浄瑠璃」を知りました。

レクチャーを聞いていて、東南アジアの文化に似ているなと、ますます興味が湧いてきました。東南アジアの人形劇といえば、インドネシアのワヤン・クリ(影絵人形芝居)やベトナムのムア・ゾイ・ヌオック(水上人形劇)、タイのフン・クラボック(人形劇)があります。人形の種類や演奏場所などは異なりますが、どちらも文楽と同じように昔話を伝えるものです。

 

アセアン祭りでの「ワヤン・クリ」の記事はこちらでご覧になれます >>

ニッドさん

3年前のアスジャ日本文化体験では歌舞伎を体験しました。歌舞伎の舞台、独特な音楽、役者の衣裳・化粧・動きなどはとてもユニークで気に入りました。今回、新たな文楽との出会いは、さらにどんな楽しめることが待っているのかを考えていたら、胸がキュンキュンしました。実際の文楽を本当に早く観に行きたいですね。(笑)

鑑賞会

やっと鑑賞会がやってきました!12月12日の夕方にアスジャ生たちは国立劇場の前に集合しました。久しぶりに会ったアスジャ生同期もいれば、初めて会った新入生と先輩もいました。マスクをしてお互いの顔がわからずコミュニケーションも深まりにくいものの、よく挨拶し合ったアスジャ生たちは久しぶりの家族の再会のようです。

安全第一のため、入館する前に事務局から新型コロナウイルス感染予防対策の説明がありました。「マスク、よし!」「消毒、よし!」「検温、よし!」と一つ一つを皆で確認しあいました。また、館内の座席は、前後左右1席ずつ間隔が空いており、安心に鑑賞できる環境が用意されていました。

今回私たちが鑑賞したのは、「外国人のための文楽鑑賞教室:芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)」です。

鑑賞教室では最初に講義がありました!

講義のナレーターと「太夫」「三味線」「人形遣い」との対話を通して、文楽のそれぞれの重要な要素を紹介していただきました。事前勉強会で勉強してきた文楽の三業を目の前に実際の各要素を見たり聞いたりすることによって、さらに理解を深め、楽しみ方がわかるようになりました。

「太夫」は、マイクを使わないにもかかわらず、劇場中に響き渡る荘厳な声をあげ、歌舞伎役者が語る音韻に似ていると思いました。「三味線」は、演奏の仕方によって、さまざまな雰囲気や気持ちの変化を感じ取ることができました。強く弾くことで怒りを感じられ、軽く弾くと悲しみが伝えられました。「人形遣い」は、3人で息を合わせて人形の動きや表情を操ることで、人形がまるで生きているかのように見えました。

講義はほぼ1時間だけでしたが、それぞれの要素のテクニックや秘訣などをみせてくれました。観客席から大きな拍手が何回も起こりました。短時間でこのような素晴らしい日本の伝統芸能を学べて、アスジャ生は非常に満足していたようです。

実際の文楽の鑑賞がいよいよはじまりました!

講義のあと、鑑賞会:芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)の時間になりました。超自然的な伝説物語の長いシリーズだそうですが、今回鑑賞したのは第4段目「子別れの段」です。人間に一目惚れした白狐「葛の葉」と狐に騙された男「安倍保名」と童子「安倍晴明」の話でした。この段では、狐の「葛の葉」の正体が露見したため、愛する子と別れた感動的なエピソードです。

 

太夫のナレーションは昔の日本語でわかりにくいですが、イヤホンガイドのおかげで英語版か現代日本語版で内容を理解することができました。太夫の声は人物と感情を一瞬で変えることができるなんて、さすがプロのわざです。三味線も太夫に負けないように、競争しながら組み立てました。となりに座っていた太夫と三味線の2人はお互いに息を合わせてテンションを積み重ね、登場人物の感情や気持ちを表しました。舞台の方では人形遣いがいて、約7キロの人形をずっと持ちながら様々な姿勢や感情をたくみに操っていました。しかも、人形の演技はまるで本物の人間が演技しているように生き生きと見えて、感銘を受けました。

太夫の語り、三味線の演奏、人形の動きの組み合わせで、親子の3人家族の繋がり、特に夫と子に対する狐の愛情がよく伝わってきました。「子別れ」という情景になると、耳から入ってくる太夫と三味線の悲しい音、目の前に現れた人形の感情、悲しみが脳裏に浮かんできて、とても感動し、いつの間にか目頭が熱くなって涙が溢れてしまいました。

上演後、後ろに座っていたアスジャ同期生の友人を振り向いたら、彼女の赤くなった目に気付きました。「泣いた?」二人とも同時に口に出し、お互いに笑っていました。二人の感想会が始まったら、他のアスジャ生も参加しにきてくれて、さまざまな感想を述べ合いましたが、一致したキーワードは「素晴らしい!」という声でした。また、このような素晴らしいパフォーマンスができるまで、どのくらいの時間を練習してきたのかという出演者の努力とその精神に感服する言葉が述べられました。

今回の文楽鑑賞を通して、アスジャ生たちは文楽を楽しむことができた他、日本の精巧な技術とチームワークの心も学んできました。「太夫」「三味線」「人形遣い」、それぞれの分野は独立した高度な技術ですが、組み合わせによって最高の文楽が出来上がります。アスジャ生たちも、今回学んだ教訓を生かして、自分の腕を磨き、将来チームワークの心を持って世界に羽ばたいていくと期待できます!

文楽:芦屋道満大内鑑のパンフレットとチケット
チケットとパンフレットが手に入りました。楽しみですね。
全員集合
鑑賞会前の全員集合写真!

今回のブログでは、アスジャ生が文楽を体験して学んだお話をお伝えしましたが、いかがでしょうか。

文楽の鑑賞が終わったら、自分がまだ知らない日本芸術が山ほどあると気付きました。文楽以外の他の日本文化も知りたくなりました。日本文化を学ぶことによって、少なくとも日本人の考え方・意識を深く理解できるようになるはずです。

このようにアスジャ生たちは、毎回の事業で何か新しいことを学んで少しずつ成長しています。その成長をもっともよく見られたのは、アスジャ生の修了式のときです。次回のブログでは今年3月のアスジャ国費留学生修了式を通して、アスジャ生、そしてアスジャ事務局の成長もお伝えします。どうぞお楽しみに!!

  • Text by : ニッドベトナム
  • Edit by : はなベトナム 、 アスジャ・インターナショナル事務局アスジャ・インターナショナル
  • Photo by : アスジャ・インターナショナル事務局アスジャ・インターナショナル